連続シャーマン小説「日暮時空探偵事務所」第6話『カカミ』

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「あいたたたたた…」

ううう。なんということでしょう。すっかり二日酔いです。

昨日は浅草観音裏の小粋なフランス料理店で、カキのワイン蒸しを堪能していりました。空けたボトルは何本だったでしょうか…もはや、記憶もありません。

しかし、こんな日でも一応出勤はしておきましょう。どうせ座っているだけの仕事ですし、先生は私に輪をかけて飲んでいたから、辿り着けるはずもありません。

「おはようございます」

形ばかりの挨拶をして事務所に入りました。

さ、ソファで居眠り…ええっ?

「遅かったな、光子。」

え、マジ?有り得ない。

グレーのインバネスコートを着て、お気に入りの雪駄を履いた日暮先生がいました。

深々と被る年代物のシャッポ。ということは…

「時空探偵の仕事だ。行くぞ。」

「イヤです。」

わたしは、ピシャリと断りました。誰がなんと言おうと二日酔いです。

「そうはいかない。緊急事態だ。ヤタノカカミのエナジーが動いている。ということは、少なくとも1年以内に十種神宝が連動するぞ。奈良に赴く。」

「ええ?今から?」

「当たり前だ。お前は新幹線で寝ておけ。」

「わたしは留守番でいいでしょう!なんでこんな年の瀬に!」

「シューマイ弁当がいいのか?うなぎ弁当か?温泉宿はとってあるぞ」

「なんで先生と行かなきゃいけないんですか」

先生は、眼鏡をクイっと上げて言いました。

「ったく、こんな時まで勿体ぶるな。お前の能力も今回必要なんだよ。石舞台の案件が、ミスリードだったんだ。滋賀、岐阜、奈良。下手したら2020年の4月中には動き出すぞ」

「いまは2018です。わたしはイマココを楽しみたいんです!」

「…天地処廻天…」

アレ?

先生がブツブツ言ったら、二日酔いは一気に解消しました。

気分さわやか♫ランチなんにしよう♫

「オエ…ぐうう…」

「あれ、どうしたんですか先生?」

「オエエエエエ…仕方ない。これでいいんだろ。手当は弾む。行くぞ。」

手当!

イェイイェイイェイ!

「先生、シューマイ弁当とウナギダブルでいいですか?」

「うげえ…」

「早くいきましょう♫」

そうそう、いい忘れていました。

わたしと先生は、体の症状を一瞬で入れ替えることができるのです。

滅多に使わない機能ですが、そこまでして行きたいということは…

ボーナスを弾んでもらわねばならない案件だと、わたしは瞬時に悟りました。

そして2018年年末。

私たちは、奈良県に赴くことになったのです。

開化天皇ー古のひとの話を聞くために。

仕方ない、出発前にアレでもやるか。

「ジョウモン オン」

(続く)

あたらしい。

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