「あいたたたたた…」
ううう。なんということでしょう。すっかり二日酔いです。
昨日は浅草観音裏の小粋なフランス料理店で、カキのワイン蒸しを堪能していりました。空けたボトルは何本だったでしょうか…もはや、記憶もありません。
しかし、こんな日でも一応出勤はしておきましょう。どうせ座っているだけの仕事ですし、先生は私に輪をかけて飲んでいたから、辿り着けるはずもありません。
「おはようございます」
形ばかりの挨拶をして事務所に入りました。
さ、ソファで居眠り…ええっ?
「遅かったな、光子。」
え、マジ?有り得ない。
グレーのインバネスコートを着て、お気に入りの雪駄を履いた日暮先生がいました。
深々と被る年代物のシャッポ。ということは…
「時空探偵の仕事だ。行くぞ。」
「イヤです。」
わたしは、ピシャリと断りました。誰がなんと言おうと二日酔いです。
「そうはいかない。緊急事態だ。ヤタノカカミのエナジーが動いている。ということは、少なくとも1年以内に十種神宝が連動するぞ。奈良に赴く。」
「ええ?今から?」
「当たり前だ。お前は新幹線で寝ておけ。」
「わたしは留守番でいいでしょう!なんでこんな年の瀬に!」
「シューマイ弁当がいいのか?うなぎ弁当か?温泉宿はとってあるぞ」
「なんで先生と行かなきゃいけないんですか」
先生は、眼鏡をクイっと上げて言いました。
「ったく、こんな時まで勿体ぶるな。お前の能力も今回必要なんだよ。石舞台の案件が、ミスリードだったんだ。滋賀、岐阜、奈良。下手したら2020年の4月中には動き出すぞ」
「いまは2018です。わたしはイマココを楽しみたいんです!」
「…天地処廻天…」
アレ?
先生がブツブツ言ったら、二日酔いは一気に解消しました。
気分さわやか♫ランチなんにしよう♫
「オエ…ぐうう…」
「あれ、どうしたんですか先生?」
「オエエエエエ…仕方ない。これでいいんだろ。手当は弾む。行くぞ。」
手当!
イェイイェイイェイ!
「先生、シューマイ弁当とウナギダブルでいいですか?」
「うげえ…」
「早くいきましょう♫」
そうそう、いい忘れていました。
わたしと先生は、体の症状を一瞬で入れ替えることができるのです。
滅多に使わない機能ですが、そこまでして行きたいということは…
ボーナスを弾んでもらわねばならない案件だと、わたしは瞬時に悟りました。
そして2018年年末。
私たちは、奈良県に赴くことになったのです。
開化天皇ー古のひとの話を聞くために。
仕方ない、出発前にアレでもやるか。
「ジョウモン オン」
(続く)