連続シャーマン小説「日暮時空探偵事務所」第3話

「あ、ドモドモ、お疲れッス。」

飄々としたその人は、まるで此処が自宅であるかのように自然に入ってきて、自然にソファに腰を下ろしました。

「タカムラ、久しぶりだな」

「そうか?ついこないだと思ったけど。あ、光子ちゃんコレ。木田ちゃんのぶんも入ってるから。」

タカムラさんは無造作に茶封筒を放り投げて来ました。

キタ。

現生。

私はそそくさと衝立の裏でカウント作業に入ります。シメシメ。

「木田ちゃんは?」

「最近は芸人の仕事に明け暮れている。事務所にも月一回顔を出すか出さないかだな。」

「ふーん。例の旅芸人仕事ね。」

「行ってる場所がアレだけどな。本人は上手く隠してるつもりだろうが、磐座のある場所ばかりだ。」

「まぁ、そこまで気にすることもないっしょ。先日滋賀で会ったときは、黒龍の案件だったな。」

「息長氏から今に至る、琵琶湖ポータルな。あれは結局淡路島とニコイチだろ。」

「その通り。例の分断された六芒星結界の。木田ちゃんは奈良に集中的に行っているが。あれはブラフだな。ミスリーディングを誘導している。」

「タカムラ、俺より良く知ってるじゃないか」

「まあねー。毎日連絡入るし」

「なぁんだ。じゃあ俺よりは事情通だな。あいつは今日辺り京都だろ?」

「いや、浅草に先回りしてる。」

「え?」

「吉備温良が岡山で動いただろう。」

「先日の総社市の大雨…」

「そのからみで天海の結界を調べに行っている。京都には明日朝戻るさ。なにくわぬ顔で芸人仕事だ。おーい、光子ちゃん、いつまでも数えてないでこっちおいでー!芋羊羹おくれよ。」

言われるより早く、私は知覧茶と舟和の芋羊羹を卓上に置いていました。

「さっすがー!いただっきー!」

タカムラさん---小野篁は、甘いものに目が無いのでした。

誰が想像するでしょう。

UNIQLOのダウンと細身のジーンズ、豹柄のスニーカーはCONVERSE。

こんなその辺のフツーの兄さんに見える人が、かの浦嶋太郎を尋問した参議、小野小町の祖父にして時空探偵の元祖、閻魔大王に支える時空シャーマン、小野篁公であるということを…

正直言えば、タカムラさんのルックスは好みです。しかし、スマホやタブレットなどのガジェットも使いこなすこの人が、平然と1000年以上こんな仕事を続けていることを考えると、ちょっぴり背筋が寒くなってくるのでした。

私は無言で日暮先生に茶封筒を渡し、木田先生のぶんはキキララの封筒に入れ、そして自分もボーナスを懐に忍ばせたのでした。

「あ、そーだ!光子ちゃんこれ。ちょい早いけどクリスマス。」

タカムラさん…1000年以上前の人なのにチャラい…いいのでしょうか、クリスマス。

でも、ジルスチュアートの口紅は、もらうとやっぱりドキドキするのでした。

(続く)

あたらしい。

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