「運命を変える文房具屋」の話

こんにちは、POPです。

今日は、実在するとある文房具屋さんのお話をしたいと思います。

10年ほど前のある冬のこと。

わたしは、その文房具屋さんの前に立っていました。

豪雪で−20度ほどの日だったと思います。

バスでよく通りかかる道。こぢんまりとしているけれど、素敵な店構え。1920年代の建築をリノベーションした物件でした。旧式タイプライターがウインドウに飾られていて、とても可愛いのです。

入ってみると、ふわっと温かい空気。

驚くほどたくさんの紙が右側の棚に。

真ん中のコーナーにはノートと文具一式。左側のコーナーはビジネスツール、2Fはおそらく特殊用紙でしょう。

すごくたくさんの、見たこともないようなノートがいっぱいありました。

大きいノート、小さいノート、メモ。

それらを夢中になってみていたら、レジの中からおじさんが声をかけてきました。

「あなた、文具が好きなの?」

優しい声です。

「はい。」

おじさんは、メガネを少し上げて落ち着いた声で続けました。

「それはいいことです。文房具は、運命を変えるからね。」

「え?運命?」

「本当ですよ。あなた、この前ウインドウの前に立ってましたね。」

「はい、どうして…」

「そう言うことなんです。文房具は、運命を変えるんですよ。どうぞごゆっくりご覧ください。」

おじさんは再び、レジに戻っていきました。

わたしは、文具選びに没頭し、ついに一冊のノートを発見しました。

Midoriという紙ブランドのノートです。

レジ(旧式のチーンとなるやつ)にもっていくと、おじさんは満足げに「Midori、いいよね。書きやすい。」と言いました。

「18ドルです。またどうぞ。」

丁寧に紙袋に仕舞い、渡してくれました。

Midoriのラクダノートというノートでした。

日本のノートだけれど、その日にカナダのモントリオール市で購入するまで、わたしは使ったことはありませんでした。

当時カナダに住んでいましたが、日本に帰国してからもしばらく使っていました。現在、同じノートは廃盤になってしまいましたが、おじさんの言葉は不思議に印象に残っています。

何よりも不思議なのは、当時フランス語がほぼ話せなかったのに、おじさんの言っていることが全て分かった、ということです。

文房具は、運命を変えるからね。

そのお店の横にはこれまた美味しいカフェがあり、その後文房具屋に行くたびに新しいノートを買っては、そこでお茶をして帰りました。(そのカフェには、そういうお客さんがいっぱいいたような気がします。)

10年前。

運命を変えるからね、というおじさんの言葉になんとなくインスピレーションを受けて、ラクダのノートに最初に綴ったのは、「こうなるといいなぁ」という漠然とした運命予想図でした。

そのノートは現存していて、読み返すと驚くことがあります。

当時スピリチュアルに全く興味はなく、おじさんの文房具屋も別にスピリチュアル的ではなく、ただただクラシックでいて、それでいて洗練されていた文房具屋さんでした。今にして思えば、Midori(日本製)のノートを取り揃えているという時点で、かなりの紙の目利きだったのでしょう。(ちなみに、そのノートは18ドルでしたが、日本で買うと600円でした)

日本に帰省したとき買えば安いのだけど、なんとなくおじさんの文房具屋で買ってしまうような、雰囲気も含めて面白い文房具屋さん。

冒頭に書いたように、この文房具屋さんは、実在します。

もしカナダ・モントリオール市を訪問することがあったら、プラス・デザール駅を降りて坂道を上がったところにある、この文房具屋さんを訪ねてみてください。

Papeterie Nota Bene

もしかしたら、運命が切り替わるかもしれません。

そしてきっと、あなたが何気なく通っている店の中にも、運命が切り替わる店が沢山あると思います。

この世の中は、本当に不思議に満ち溢れていますね。

いつもお読みいただいて、ありがとうございます。

今日も、不思議な1日をお過ごしください。

POP拝

あたらしい。

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