↓こちらの記事の続きです↓ 【洞窟】与那国島① 星が呼んだ。 【洞窟】与那国島②天空の巨石、ティンダハナタ 【洞窟】与那国島③風の言い分 【洞窟】与那国島④時空の証人
2017年10月28日午後3時。
龍の住処を知る男、Tさんは作業服で現れた。
「今日は、町長の就任式のお祝いがあるんで、仕事早上がりで準備があったんです」
なんでも、就任式で伝統芸能を踊られるという。お仕事と踊りの準備の間、時間を作って来てくださったのだ。ありがたい。
「では、早速行きましょうか。龍の通り道があるんです」
我々はTさんの車に同乗させていただき、島の西側にある「龍の通り道」に向かった。
与那国馬が放牧されているのどかな風景で、私たちも午前中に通った場所。
その近くに、龍の通り道が不意に口を開けていた。
「僕は、子どものころから『少し先の未来』がわかるんです。龍は、そういった時間の間に住んでいる感覚があります。」
どきり、とした。
わたしも、「時間」の「間」を感知して、そのスキマに龍が見えている。
会話の中に、不思議な「答え合わせ」と「視点」が入ってくる。
子どものころ、意識して「視ない」ようにする前、時間(という概念)の枠が見えていた。
概念、というものじたいがわからないので、「ジャングルジム」と呼んでいた。
そのスキマに入ると、時間というものじたいはなく、しーんとする。
この「龍の通り道」も、「しーんとする手前」の空気だ。
Tさんが、ふとつぶやいた。
「龍の住処は…ある沢のところなんですが…」
「行きたいです」
Tさんは、「いいですよ」と快諾してくださった。
再び車に乗り込む。
移動中、UFOの話になった。Tさんは、宇宙人とPOPに情報交換されているともいう。
「宇宙人が見せてくれた時間の形は、8の字を横にした「∞」の形です。真ん中が今。今から未来に出て行って、そこから過去にもどってくる。だから今が良くなれば未来が良くなって、過去がよくなるんですよねぇ」
色々な不思議な話を、POPであたりまえ、地に足の着いた口調で語るTさん。
このひと、ほんとうだ。
「龍の住処」は、斜面を降り、沢を少々上った場所にあった。
亀裂を、ぐいぐい進んでいく。
岩と植物が混然としている。
「ここです」
にこやか&POPに龍の住処を示すTさん。
そこに入った瞬間…空気の圧と温度が変わった。
これ。
このあたたかさ、静けさ。
「時間」の「間」だ。
この感覚は、言語化できない。
そして、しなくてもいいものだとおもう。
なぜなら、人間の概念とべつのところに「在る」ものだから。
「ここは龍の島なんです。漁師が沖から与那国島を見ると、龍に見えるといいます。」
Tさんは話す。
「龍は、あたりまえにいて…恐れるものじゃなくて…僕、上に乗ってたんじゃないかなぁって記憶あるんですよ」
すごくすごく、等身大で、淡々と。
Tさんは、龍の親しみやすさ、それでいて不思議な部分を次々に話してくれた。
「与那国島では、薩摩の支配下で武器の所持が禁じられていました。しかし、武術を忘れるわけにはいかない。そこでかつての男たちが、踊りの中にその伝統を残しました。それが棒術です。今夜踊るのはこういった伝統芸能ですが、薙刀の頭に龍がついているんですよ」とTさん。
「へぇ…見てみたいなあ。」
「見てみるといいですよ。久部良の公民館の横の窓からのぞけますから」
「そんな簡単に、覗いちゃっていいんですかねぇ」
「全然問題ないと思いますよ~」
これは見たい。見てみたい。
私たちは、感謝して見学することにした。
準備に行くTさんとはここでいったん解散。
公民館に行く前、私たちは「久部良バリ」に向かった。
かつて、苛烈な人頭税が課せられていた与那国島。
「口減らし」の一環として、非常に悲しいことが行われていた。
それは…この岩の裂け目を、妊婦に飛ばせる、というものだった。
裂け目の深さ、およそ7メートル。
真下は言うまでもない。海だ。
そもそも、ここはいわば。
しかも絶え間なく噴き上げる潮風で、足場は濡れ、突風にさらされている…
深い、深い、深い裂け目。
言葉にはならない思いだ。
しかし、それを感じた瞬間、別の思いも電撃のように走った。
この島は、すごいところだ!
この島の子孫たちは…
「絶対に産む!」という強烈な決意の女たちのDNAの証だ。
哀しくも失われた魂も含めて。
与那国の女の魂が、全時空で命を応援している!
これが、与那国のあたたかさ。
これが、与那国の強さ。
哀しさよりも強烈に、それを感じた。
合掌。
さて、日が暮れ、久部良公民館に向かう。
すると、公民館は賑やかな宴の風景だった!
与那国町、外間町長の就任の宴。
外からのぞいていると、島のオジイたちが「あんたたち、中に入りなさい!」と言ってくる。
「見学なんで、こちらからで大丈夫ですよ」というと、
「観光も見学も、とにかく中に入りなさい!お弁当をもらいなさい!」と進めてくださる。
お言葉に甘え、流れのままに宴席に混ぜていただく。
立派なお弁当。
このほかにも「牛の煮物」「お刺身」「餅」など、食べきれないほどのごちそうをいただく。
町長のご挨拶、関係者のご挨拶で気づいた。
日本最西端の与那国島は、「日本のあたらしい在り方」をリアルに模索している場所なのだ。
離島ならではの「15歳で島を出て高校に行かねばならない問題」「水の問題」「保育園問題」「建物・インフラ問題」。これらを具体的にどう解決するのか?それは、島のリアルな問題なのだった。
つくづく思った。
今日、船に乗れなくてよかった。
船に乗って海に出ていたら、「与那国のリアル」を、こういう形で見ることはできなかった。
不思議の島のリアル。
このめぐりあわせをくださったすべての人に、タイミングに、感謝したい。
いろいろ思いを巡らせていると、演武が始まった。
踊り、太鼓…そして、Tさんの演武だ!
華麗、勇壮。
踊りとしての美しさは言うまでもないが、そこに引き継がれるスピリットが素晴らしかった。
素晴らしい、息の詰め開き。
命だ。
命が、型に宿っている。
宴の後、Tさんにご挨拶に伺った。
Tさんの息子さんが「牛肉もらったー!」と報告に来ている。
勇壮な気合から、ほんわかしたお父さんの空気に戻るTさん。
本当に、貴重な機会をありがとうございました。
Tさんとは、「洞窟トーク」もさせていただきました。
与那国島の洞窟地図(!)をお持ちだそうです。
(またあらためて、洞窟探検どうぞよろしくお願いします!)
与那国の旅は、予想外の連続だった。
「台風で行けないのではないか」と思ったら、行けた。
「天気がもどったから海底遺跡に行けるのでは」と思ったら、行けなかった。
海底遺跡に行けなかったために、龍の住処を知る男に会った。
龍の住処という不思議を知る男にあったからこそ、島の究極の現実を垣間見た。
予想外の旅からは「岩」「龍」「海」「路」のキーワードが浮かび上がってきた。
これは、なんだろう?
翌朝は、快晴だった。
なんた浜から、ティンダハナタを望む。
楽園の風景。
昨日は何だったのだろう。
浜で散歩していたオバァに話しかけられる。
「風が強いから気をつけなさいよー!」
「はーい」
強い風の中、ティンダハナタはやはり、凛としていた。
さようなら、与那国。また訪れる日まで。ありがとう。
☆ときわより一言
与那国編は、いったん今回で完結です。
映像をまとめて発表しようと思ったのですが、次回洞窟をじっくり探索した暁にあらためて。
…そして。
この与那国でのできごとが、実は大いなる伏線だったと、後日気づくことになります。
そのあたりも、またPOPにお伝えしていきますね。
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